「ちゃん」
「んー?」
ソファに座って暖かい日差しを受けながら。
雑誌を捲っていた彼女に何気なく声をかける。
彼女は、読んでいた(と言っても、読めないだろうから見ていたが正解だと思うケド)雑誌から視線を俺の方に向ける。
キョトンと俺を見上げて、にっこり微笑む。
あー、この表情に弱いんだよねぇ…俺
他の女とちがって、作ることを知らないちゃん。
思ってることが素直にカオに出る…だから、表情の一つ一つが見逃せない。
ほら、どうしたの?って顔になった。
そうやって、思ってる事でコロコロ表情が変わってるなんて、本人は気付いてねぇんだろうなぁ
呼んでおいてなにも言わない俺に、今度は悩んでる顔になったな。
色々難しいこと考えてる表情。
ココで笑ったりしたら、ぜってー怒るんだろうケド…ダメだっ、耐えられねぇっ。
「ちょっと、悟浄!」
声を押し殺して肩を揺らして笑ってる俺に、ちゃんのちょっと怒ったようなむっとしたような声。
「悪ぃ悪ぃ。ちゃんがあんまり可愛い顔すっから、ついな?」
あんま笑いすぎてっと、ちゃんが本気で怒っちまうから。
大きく深呼吸をして笑いを引っ込める。
「で?なんなの?」
まだ少しむっとしている様子で見上げてくるちゃん。
そんなところもぜーんぶ可愛いんだけど、今は置いといて。
俺はもう一度ちゃんに気付かれないように今度は小さく息を吸って、肺に空気を送り込む。
「手、出してみ?」
「手?」
「コレ、やるよ」
ジーンズのポケットに小さな袋をぽんっとちゃんの小さな可愛い手の上に置く。
あ、またキョトンとした顔。
そんで、薄いブルーの袋にピンクのリボンがついた袋をマジマジと見つめる。
あー、気付いてねえのな…だから軽くヒント。
「今日は何日デショウ?」
そう言った途端、ちゃんの顔が何かを思い出したような驚いた表情に変わる。
ほんっと、わかりやすいのな。
「6月7日…あーっ!悟浄、覚えててくれたの!?」
「もっちろん。可愛いちゃんの誕生日をこの悟浄さんが忘れる訳ないでショ?っつーことで、Happy Birthday ちゃん」
にっこり笑えば、ちゃんも嬉しそうに笑ってくれた。
顔には出さず、彼女が喜んでくれたことに内心ほっとする。
「ありがとうー!開けてもいい?」
「どーぞ?」
嬉しそうにリボンを解くちゃんの姿を…
俺は内心ドキドキしながら見つめてた。
色々考えて調べて。
結局ソレになったケド…はたして気にってもらえるか…
ちゃんの事だから、どんなものでも喜んでくれるだろうけど…
でもやっぱりちゃんと心から喜んでもらいたいじゃん?
上手く言えねぇけどさ。
今までの女は、社交辞令として女が好きそうなもんやっとけば喜んでくれたし。
ソレが上辺だろうが何だろうが構わなかったし。
やったモノがその後どうなろうが別にどうでもよかったケド。
ちゃんには。
心から喜んでもらいたい。
大切にしてもらいたい。
身につけてもらいたい。
出来れば…彼女の中の大切なモノの一つになってくれれば…とすら思う。
選ぶ時にもちゃんの事思いながら真剣に選んだし。
彼女が好きそうなモノで一番似合いそうなモノを選んだつもりだ。
誕生日プレゼント一つにこんな悩んだのも、緊張してんのも初めてなんだぜ?俺は。
薄いブルーの袋からころりとちゃんの手に転がり出てきたのは。
俺が選んだピンクパールのイヤリング。
小さな薄ピンクの花に控えめにあしらわれたピンクパール。
小さな可愛らしい花が、微笑んだ時のちゃんみたいで…思わずコレに決めちまった。
ちゃんの反応を…俺はドキドキしながら…待つ。
じっとイヤリングを見つめて…次の瞬間、嬉しそうにサイコーの笑顔で…笑った。
俺の大好きな表情で。
「かわいいーっ。ありがとう悟浄!すっごく嬉しい!ね、付けてみていい?」
「んじゃ、俺が付けて差し上げましょう?お姫様」
本当に嬉しそうに笑ってくれたことが嬉しくて。
でも、んなことで大喜びしちゃってる自分が恥かしくて。
冗談めかしてちゃんの手の平からイヤリングを一つ取ると柔らかくて白い耳朶にそっと触れる。
柔らかいソレを、強く締めすぎない様に…でも落として無くさない様に…
緊張して震える手に苦笑しながら丁寧に付ける。
「もう片っぽな?」
目のやり場に困ったんだろうな…
ちゃんは目を閉じて頬を紅く染めながら…じっと付け終わるのを待ってる。
「ね。パールって6月の誕生石だよね?」
不意に、ちゃんが口を開いた…
耐えきれなくなった…ってトコロか?
そんなところが、また可愛い…ってこと、わかってねーんだろうなぁ?
「そ、6月の誕生石…でもピンクパールは特別」
「なんで?」
「ピンクパールはな?6月7日の誕生石なんだよ」
だから、選んだ。
「そーなの?」
「そーなんです…ちゃんと意味もあるんだぜ?…はい完成」
「どんな意味?…あ、ありがとう」
うん、絶対似合うと思ってた…
バリ可愛い。
「意味は秘密…イイから鏡見てこいよ」
意味は教えず…鏡のあるほうへちゃんを連れていく。手を引いて…
ちゃんはきっと、自分で鏡を見た後にその姿を嬉しそうに八戒に見せに行くんだろうな。
ピンクパールの意味の事は忘れて…
その単純さもちゃんの可愛いトコロ。
「ありがとう悟浄!すっごく嬉しい!!八戒に見せてくるね!」
ほらやっぱり…
庭で洗濯物を干している八戒の方へパタパタと走っていくちゃんの背を見送って。
きっと、誕生日だって事は言わずにイヤリングの事だけを伝えるんだろうと思う。
ま、あのヤローもちゃんの誕生日を忘れるワケがないけどな。
ピンクパールの石言葉は
「辛抱強い愛」
ふわふわと優しげで可愛くて涙もろくて…
ちょっとした事で壊れてしまいそうなちゃん。
でも
シンは強くてしっかりしてて…
我慢強くてどこまでも一人で頑張ろうとする彼女。
そんなところが可愛いピンクパールと対照的な石言葉にピッタリだなと思ったことは…
絶対言ってやらないけどな。
君が産まれてきてくれたことに感謝しよう。
君が産まれてきてくれて、出会える事ができたから…
あるはずの無い奇跡的な運命のいたずらで…
会えるはずのない君と会うことが出来たから。
君に会って、産まれてきて良かったと…
思えることができたから。
だから、君が産まれた今日この日に。
心から感謝をしよう。
産まれてきてくれてありがとう。
Special Thanks 竜斗 サマ
ギャーッッッッ!!悟浄っっっ!!カッコイイ〜〜〜♪←落ち着け。
ぜぃぜぃぜぃ・・・(深呼吸を繰り返して何とか落ち着かせる(笑))
誕生日から約1年経ってしまいましたが、ようやく皆様へお裾分けする事が出来ました(ようするに今までは1人で楽しんでいた、と(笑))
サイトに遊びにいらして下さっている竜斗さんが、風見の為に・・・このバリ素敵な悟浄を下さいましたっ!
竜斗さん、ほんっ・・・とうにありがとうございましたっ!!
あ、この素敵悟浄は風見のもの(え?)なのであげませんよ?
イヤリングつけてくれる悟浄は私のものだーっっっ!(落ち着け(笑))
もっと竜斗さんの素敵夢に浸りたい方はコチラからどうぞw